ブログ詩79

「水溜まりに映そうとしたもの」

突然飛び込んできたサッカーボールで
崩れていく水溜まりに映った顔
「何やってんだ!」
あれは和仁の声
はっとして走り出す

9歳から10歳を刻んだ日の三時間目
罵倒されながらボールを追っかけた
気付けばゴールを決めた和仁の声
「ナイスアシスト!」
肩を叩かれたときには
水溜まりを見つめていたことなど覚えていなかった

あのときの僕は
どんな顔をしてたんだろう
昨日の自分より大人になった僕は
どんな顔してたんだろう

ぽつぽつと雨が降り始めた四時間目
そうだ、水溜まり
はっとして校庭に行こうとした
「何やってんだ!」
響いた先生の声
「もう10歳になったんだろう?」
たしなめられていた

サボったことなどなかった5時間目
始業チャイムを背にして
外に出ると雨はやんでいた
一つだけ見つけた校庭の水溜まり
泥だらけになって走り出した
アメンボの影追っかけて
「何やってんだろう?」
幼心に思ったけど
水溜まりの中に新しい自分を見つけたかった
昨日とは違うんだって思いたかった

意を決し水溜まりの前に立って
深呼吸しながら覗き込んだ
はっとした
9歳の顔した僕が
昨日の僕が

いた

僕は昨日となんら変わっちゃいなかった
ただ呆然と立ち尽くす、泥くさい僕のままだった

「何やってんだ?」
呆然とする僕に和仁の声
「珍しいな、いま授業中だぜ?」
曇り空は晴れてきていた

「…サッカーでもやるか?」
気付けばボールを蹴った和仁の声
「今日はナイスアシストだったじゃん」
蹴ろうとしてキョトンとした

「今までのお前とは見違えるプレイだったよ」

和仁の声が
校庭に響いた

はっとする
僕はボールを蹴り損なっていた
あべこべな方向に飛んでいって
水溜まりに飛び込む音が聞こえた

僕はボールを追っかけた
ただがむしゃらにボールを追っかけた
気持ちを抑えきれずに必死に走った

そして泥だらけの水溜まりを
思いきり
踏みつぶした

「何やってんだ!」
和仁の声
僕は泥だらけになっていた泥だらけで笑った

もう水溜まりに興味はなかった

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