ブログ詩66

「名前一つ」

南海の孤島に
流れついた一人
空を見 海を見
まず始めに 叫ぶ名前一つ

途方もない海を渡る鳥達は
羽を休められる島を
いつもどこか探してる

名前を呼ぶ声が聞こえて海鳥は
南海の孤島で羽を止める
夜の端で 涙流す人を見つめて

羽ばたきが聞こえてその人間は
南海の孤島で 涙止める
世界の端で その人間を探す人を思った

海鳥は
我が身を捧げ
羽ばたきに終止符を打つ

逃げようとしない海鳥を
その人間は

殺して

途方もない死から
逃げようとした

南海の孤島に
流れついた一人
空を見 海を見
またいつも 叫ぶ名前一つ

しばらくして
結果はどうあれ
いなくなった人間

海鳥の骸を残して
南海の孤島には今も
木霊する

名前 一つ

ブログ詩65

「ハロー、電車の歌」

電車の歌は数多いけど、各線車両の形はちょと違う
駅名出した歌は数多いけど、各駅乗る人は全然違う

プラットフォームなんて
ふらっと立ち寄るもの

学校に向かう電車と家に向かう電車
往復しながらつまらないなんて言っちゃいけないんだなぁ

満員電車はやぱ嫌い
けれど最後部車両僕一人はちょと怖い
電車の歌は数多いけれど、それだけ人の思い乗せてる

ハロー、電車

地下鉄の中はいつも暗い色
壁の染みはいつも違う色

発射音はけっこう違う音
けれどわざと似せてる車内駅内アナウンス

プラットフォーム
くらっとする

遠い遠い知らない駅へと向かう電車
乗り換え多くて大変だなんて呟いたのはいつだったかなぁ

初乗り高いから地下鉄はやぱ嫌い
けれど地下鉄から地上に出る瞬間がちょと好き
電車の歌は誰かの心の駅に響き渡って
そのまま人の思いを乗せてる

ハロー、電車

今日も同じような顔してどこに行くんだい?
今日も誰かの心に向かって走り出すのかい?

電車はこの世をあまた走ってるけど
何回だってあの駅に行けるけど
ダイアグラム通りに行かないのは人の心と同じだろ

電車の歌は数多いけど
今日も新しく生まれて

線路に
プラットフォームに
誰かの心に

ハロー

ブログ詩64

「解離性同一性」

「むかえくる?

ほんとにむかえくる?

きょうはよるじゃないよね?

てつないでかえれるよね?

かえりにおかしかってくれるよね?

こんやはごちそうっていってくれるよね?

いかないで

やだやなの

いかないで

やだ」

「じゃあ良い子にしててね

うん行くよ

行くってば

そうならないようにする

うん帰ろうね

わかった

うん

だだこねないの

もう

どうしたの

すぐ戻ってくるから

じゃあね」

小さいときの声がして

はっと振り返った

あのときママは戻ってきたっけ?

あのとき私は帰ったかしら?

私は今いくつになったっけ?

ごちそう作るのは今日だっけ?

私の声はさっきのどっち?

私は今むかえに行くの?

私はまだ待ってるの?

げんじつとこころのなかをいったりきたり

おかあさん

まってよ

いっちゃったら

おかあさん

じゃなくなっちゃうから

おかあさん

あたしにお母さんは

いない

お母さんにあたしは

いない

いるのは私のなかのいろんな人

わたしはだれでもない

一人で

送迎ごっこ

できるんだ

俺ってやつは

ブログ詩63

「理由」

この手は
なんでもできて

あなたを撫でることも出来れば
首を締めることも出来る

いろんな出来ることを
出来ないことにしたいのは僕の気持ちだ
いろんな出来ないことを
出来るように変えられるのも僕の気持ちだ

「しちゃいけないんだ」

道徳、通念、人道、常識、仁徳、常道、道理、観念

決めつけることが悪いとは思わないんだ
理由を曖昧なものに抽象的なものに自分でもよくわからないものにしちゃいけないんだ

この手があなたを撫でられないのはあなたの気持ちがわからないから
この手があなたの首を締められないのはあなたを失いたくないから

理由なんてそれくらいで充分だ

ただあなたが好きだから

理由なんてそれだけで充分だ

ブログ詩62

「東京の夜に雪が降る」


東京の夜に雪が降る。
僕には雪など見えはしないが、手を広げれば冷たく広がる小さな水粒が、

「降っているんだよ…。」

そう呟いているのだ、間違いない。
ならばイルミネイションに照らされ気持ちの悪い色で空を覆うあの雲から、お前たちは生まれたのか?
答えず雪だった一片は、僕の手から逃げたしてまた空へと消えた。

しきりに曖昧な色をした空を眺めて、バカみたいに何回も息を吐いた。
冷気が喉にこびりついて、僕は何回も唾を飲み込んだ。

真っ暗だ。
僕は真っ暗だ。
ただそう思った。

イルミネイションに照らされ、気持ちの悪い色をした横顔が明かりの落ちたショウウィンドウをよぎった。

消えてしまいたくなる。

僕も、あの空から生まれたのか?

消えてしまいたくなる。

街風にゆられ東京をさまよう僕こそが、雪、でないと何故言えるだろう。
誰かが手を広げれば、僕もその温もりの中で、溶けて空へ消えるはずだ。
その誰かがいないだけ――。

東京の夜に雪が降る。
雪など見えはしないが、確かに降っている。
一粒一粒、

「生きているんだよ…。」

そう呟いている。

東京の夜に雪が降る。
積もることなき雪が降る。
明け方の時間はまだわからない。

ブログ詩61

「ホラー映画とレントゲン写真」

ホラー映画

動く骸骨
しゃれこうべが怖い

動かない骸骨
レントゲン写真に写った
僕のしゃれこうべ

それ見て
僕だって今動く骸骨
生きたくたってこれからも骸骨

気付いた
そうなんだよね

中身がからっぽの骸骨が
「脳の足りないヤツ」と僕を責めたてる
頭蓋骨ならして骸骨が
「頭ばかり固くて…」と僕をあざけ笑う

診断結果

嘘言う担当医
声ひそめ顔かたい

動かない残像
レントゲン写真に写った
僕の影と胸

そら見ろ
細くなってきた僕の骸骨
意味なくなった?これからの歳月

気付いた
そうなんだね

中身がつまってる骸骨も
“No more desire”と僕に余命告げる
頭蓋骨笑わせて骸骨は
“I'm an analyzer of dead”と僕に黙って語る

病院の一室
暇で見ていたB級ホラー

ぼんやりと思い出していた
レントゲンの骸骨が告げた僕の死亡

画面の中の骸骨は笑って
画面の中の骸骨を笑って

レントゲンの骸骨を笑って
レントゲンの骸骨、僕を笑って

僕は死を
怖いと思ったのか?

僕の死を
怖いと思ったのか――?

中身がからっぽの骸骨が
「脳の足りないヤツ」と僕を責めたてる
頭蓋骨ならして骸骨が
「頭ばかり固くて…」と僕をあざけ笑う

中身がつまってる骸骨も
“No more desire”と僕に余命告げる
頭蓋骨笑わせて骸骨は
“I'm an analyzer of dead”と僕に黙って語る

ホラー映画とレントゲン写真
動く骸骨と動かない骸骨

動かない事実

動かない僕

ブログ詩60

「冬の山手線、子供とボク」

顔を上げてはっとした

頭を叩かれて黙った子供
それを見て黙ったボク
冬の山手線

眩しい真昼の太陽
人だらけの静かな正午
ケータイを閉じた

端から見れば滑稽にしかうつらないだろう
ボクは最後部車両まで歩き出した

乗り換え楽だとかそんな理由じゃない

頭を叩かれた子供が今度は泣き出したからとかそんな理由じゃない

読みかけたメールを全て読むための移動

池袋
人が乗りすぎてかきわけるに邪魔

そんな顔するなよ
そんな顔で見るなよ
ボクの顔を見るなよ

最後部車両
割と人はいる

泣き出した子供の声はもう聞こえない

よかった

ボクはもう一度ケータイを開いて

その場に泣き崩れた

乗客がはっと押し黙るのを感じながら
ボクは

更に声を荒げて
子供みたいに泣き出したのだった

冬の山手線

滑稽極まりない

子供とボク

ブログ詩59

「コンクリート」

パパのしごとは
こうじのしごと

ビルをつくったり
みちをつくったり
かべをつくったり

こんくりーとでかたまった
かべやはしらとか

パパがたのんで
とろとろのこんくりーと
ながしこんだの
そしたらかたまったんだよ

ふしぎなはいいろ

ふしぎだったよ

あるひ
パパがあたらしいビルをつくっていた

とろとろのこんくりーと
そそいでいた

こんくりーとのなかには
てつのぼう

とろとろのこんくりーと
そそいでいた

パパがいった
「なかにはいったらでてこられないよ」

とろとろのこんくりーと
そそいでいた

「あ」
かぜでとんだぼくのぼうし
そのなかにおちていった

すぐにみえなくなった

とろとろのこんくりーと
そそいでいた

ずっとそそいでいた


…いつしか僕は、大人になり
周りには子供の頃より
コンクリート塀が増えた

都会に移ったら建物だらけで
父をたまに思い出す

そんなときふと
キレイに整ったコンクリート塀にそっと触れる

当たり前に冷たくて
父が頼んだのではないコンクリート
当たり前な顔してそこにいる

不思議な灰色
コンクリートジャングル

この街でとろとろのこんくりーとは

都会の何を隠したんだろう


僕の帽子は今も

見つかることはない

ブログ詩58

「untouchable」

電車
窮屈な満員電車で
たまらなくなった

どうして
汚い男と
臭い女が
私に密着しているのだろう

理不尽だ
誰も触るな


必死に人をかきわける
起こるざわめき無視して
満員電車を駆け降りた


服を脱いで
化粧を落として
私は私じゃないものを剥がしていく

洗面所
歯を研いて
食べたものを吐いて
私は私じゃないものを削ぎおとしていく

裸になって
もう私には私しかくっついていない?

いいえ
私には
私じゃない空気がくっついているのだと気付く

それは水に潜ったっておなじ

地球にいれば
私は私じゃないものに触れていなければならない

地球
いやよ触らないで
私から離れてよ

気付けば
この世界に触れるこの体すらうっとおしくて

肉体
からも抜け出したよ

何も触れられない世界へ


この世界は私
この世界の全ては私
私以外に何も無い世界

生きている死んでいるなんて
この世界じゃわからないし意味もない

わかるのは
私はここにいるということ

私しか
私がいることはわからないけど

私はここにいるということ


あなたの

そばに

ブログ詩57

「Two in a night」

吐息二つ
顔を見た
頬に伸びた腕
軽くつねった

瞬き二つ
シャンプーの匂い
布ずれ
背中を強く抱く

咳き二つ
秒針の音
ろうそくが揺れる
柔らかい肌

囁き二つ
ローズティー
「あったかいね」「うん」
湯気がのぼる

輝き二つ
瞳にうつった瞳
ゆっくり動いた唇
バラの香り

呼気二つ
一瞬消えて重なる
ろうそく消えて静まる
雑念消えて繋がる

刺激二つ
真っ暗な部屋
名前を呼ぶ声
朦朧な意識

寝息二つ
飲みかけローズティー
溶けかけアロマキャンドル
ぬくもり

二人の夜

ブログ詩56

「プリメーラ」

プリメーラ
一片の蝶が君にとまる
プリメーラ
嬉しそうに君はそれを眺めていた

風が透き通るこの丘で
出会った日のことを
君は語る

おとぎ話のように
通りすぎていく声
その柔らかさに目を閉じた

暗闇の中に広がる
追憶の世界
思い出の中から
君の香りがした

プリメーラ
プリメーラ
冷たい風に吹かれ
控えめに揺れる

プリメーラ
プリメーラ
この空を青くしたのは
消えない君のささやき

プリメーラ
風と遊び疲れてゆっくりと眠る
プリメーラ
嬉しそうに星空がきらめいていた

君の頬をなでてしまいたい
温もりになって君を覆いたい
君は眠る

おとぎ話のように
過ぎ去っていく日々
その儚さに心がふるえて

夜明け間近に広がる
幻想の世界
ぼやけた朝に
君が目を覚ます

プリメーラ
プリメーラ
冷たい風に吹かれ
控えめに揺れる

プリメーラ
プリメーラ
この空を青くしたのは
消えない君のささやき

プリメーラ

君の花びらを優しく撫でた…

ブログ詩55

「あのひのそら」

見つからない思いを
見上げたことのない空から
救い出そうとして
涙をなくした

一度きりの思いを
幸せと呼んで

雲の深みへと
この手を濡らす

見過ぎたね空
眩しかった太陽

寂しくてほら
ねぇ呼吸を止めて

四折りにした手紙の中からこぼれ落ちたネックレス
太陽の飾りに光るイミテーションが切なくて

広げた手紙が空に向かって飛んでいく
あなたの声がかすかに聞こえた

あの日の空を

見上げて

ブログ詩54

「そこにある無限」

永遠につづくものは
思考の世界にしか存在しないのか?

夢を見ること
愛すること
魂の輪廻

目の前にある君の温度がいつしか途切れてしまうように
この世は限界ばかりだ

息を吸い、吐き
生きる
人間の営みも有限
生物の存在も有限
地球の周回も有限

物質の無限を
目の前の無限を
皆が諦めるものに無限を…

そこにある無限は希望でしかないのか
机上の空論ではないのか

元素はどうだ
存在しつづけること
形はどうあっても無限でないのか

存在はどうだ
存在する、という事象は無限でないか

宇宙はどうだ
そこにある彼方は無限でないか

それならばと
宇宙に無限を求めたとき
僕は有限に包まれた限界という僕の世界をちっぽけに感じた

有限の世界は有限か

有限という仕組みにとらわれた世界が存在しつづけることは無限か

有限という仕組みにとらわれた世界が全て終わりを告げたとき

そこにあるのは無限か

有限がそこにあるとき

有限を繰り返す無限の世界があるのか
有限がなくなったとき
あとには無限の世界があるのか

そこにあるのは有限に裏打ちされた無限である

ブログ詩53

「バイバイ」

走っていくバイバイ
丘を蹴って
空をひっかいて

誰もいなくなったよ・・・

こんにちわって言われたら
こんにちわって返さなきゃ!
バイバイって言われたら
バイバイって返さなきゃ・・・

誰もいなくなったよ・・・

僕のバイバイがずっと丘に響いてる
あの人のバイバイはもう聞こえない

バイバイ言わないで
帰らないでよ
もっと僕と一緒にいて
寂しいよ
寂しいよ
泣いちゃうよ

こんにちわ
こんにちわ
こんにちわ

会いたいから
何回も叫ぶ

空は黙って
あの人のこんにちわを連れてこない

諦めたよ・・・

丘の上に登って
もう一回
バイバイって叫んだ
精一杯の声で
バイバイって叫んだ

もちろん
あの人のバイバイが返ってくることはなかったけど

空を駆け巡っていく僕のバイバイに
早くあの人のこんにちわを連れてこさせたくて

バイバイ
バイバイ
バイバイ

バイバイ
バイバイ
バイバイ

ブログ詩52

「冬着」

今年の冬に、カーディガンを着せて
掛け間違えた去年のボタンは、一つずつはずした

君のぬくもりを、冬のぬくもりだと思っていた
空しさを埋めるだけなのに、それはとても暖かかったんだ

あの日二人で巻こうとしたマフラーは短すぎて
二人でいた日々のように短すぎて

やっぱり巻けない、と今でも思うよ

去年の冬に、さよなら告げて
手袋を二つしまいこんだよ

今年の冬は、長いマフラーを巻いて
そこに、僕はいるんだよ

ブログ詩51

「時空を切りとる仕事」

彼女は、時空を切りとる仕事をしているのだと言う。

彼女に不似合いなゴテゴテしたカメラを持って、私は瞬間を封じ込める仕事をしているのだと言う。

だから君は、僕の目の前で5月12日10:32学校の噴水から飛び立った3羽の白い鳥を、新緑の茂る桜と小さな綿雲が隅に浮かぶ空と一緒に、その黒い箱の中の薄っぺらいネガに刻み込んだのだろう。

僕はその様子をにまりと見ていた。

彼女は不思議そうな顔をして、何なの、と僕に訊く。

僕も、時間と空間を切りとる仕事をしているんだ。

彼女にそう言って、僕は動かしていた手を止めた。

僕の日記帳には、今日も彼女との時間が刻み込まれた。

そこにはきっと、彼女が今日撮った写真が挟み込まれるのだろう。

僕らは、時空を切りとる仕事をしている。

ブログ詩50

「白雪」

はらりはらり
雪の白
遠くから見たら
ぼんやりの白
近くから見たら
点々と白

見上げた僕にも
のっかる雪の白
髪の毛にひっかかって
また点々と白
手でふりはらって
溶けたり飛んだり
消えていく


木枯らしにのっかって
どこに行くの
あの空の白

積もったら
太陽にキラめいて
溶けてしまえば
白はいよいよ白でなくなって
空に還るんだよ
覆った大地の白

けれども
空に戻ったその白は
知らん顔して
まとまって

また空を覆う白になる
また大地覆う白になる

ブログ詩49

「支配と抵抗」

せがのびた くさで ゆびさきを きった

きれいな あかが ゆっくりふくらんでく

ちゅるると くちびる あかを すいこんで

したで なめずり にんまり わらった

はっぱを ふみつぶしたよ ぐりぐり

あとかたとか みえないくらいに

みどりが ぐじゅぐじゅ

ごめんねと いいながら あしで ぐりぐり

いつしか きずは なおり

くさだって あたらしい はをだす

のびたくさ またさわりたい

ちっちゃいきず またつくりたい

そして また

ふみつぶしたい

ブログ詩48

「body」

仮の体を手に入れた
私は私でなくてよくなるのだ

幸せを舐め回した素肌をあらわにして
快楽のため息を好きなだけ漏らす

あなたの言う悦びってこういうことなのかな
あなたの言う欲しいってこういうことなのかな

あなたに見られ触られ撫でられ舐められ
何も感じない体にさよならを告げたの
心が体を支配して
その高みを目指すの

愛し愛し尽されいつしかくち果てたのは
あなたから解き放れた私の体だけ

寓話1

「一つの人類滅亡」

人の幸福を食う化け物がいたのだと言う。
人の不幸を食う化け物がいたのだと言う。

幸福も不幸も取り上げられた人間たちは、やがて「人間」とは呼ばれない生き物になったのだと言う。
人間がいなくなると、その化け物たちは餓死してみんないなくなってしまったのだと言う。

しばらくして「人間ではないモノ」たちの中から人間に戻る者が現れ始めたのだと言う。

戻った人間たちはまた、幸福に狂喜し不幸に苦悶したと言う。

それを見ていた残る「人間ではないモノ」たちは、人間たちの幸福と不幸を奪い出したのだと言う。

しかし奪ったところで人間に戻ることもできず、ただ人の幸福を食う化け物と人の不幸を食う化け物が生まれただけだったのだと言う。

人の幸福を食う化け物がいたのだと言う。
人の不幸を食う化け物がいたのだと言う。

幸福も不幸も取り上げられた人間たちは…。

そうして人類は滅んだのだと言う。

ブログ詩47

「僕の君、君の僕」

君はその額縁の絵を美しいと言った。
僕は絵をはさんでいるガラスに映った君を美しいと思った。

素っ気ないコンクリートの美術館に、見つけに行こう、君はそれだけを呟いて入っていった。
そんな彼女を見つめながら僕は彼女はどうやって別れを切り出す気なのか考えていた。
名もない画家の、名もない絵を並べた美術館の中で、君のヒールだけがカツカツと声をあげた。
別段僕は絵を見入るわけでもなく、不思議な寂しさを感じながらヒールの声を追いかけていた。
少し広い区画で突如立ち止まった君は、この絵、と小さく指差した。
促されるようになんとなくそちらの方向に目をやりながら、僕ら以外には誰もいないのだなと思っていた。

君はその額縁の絵を美しいと言った。
僕は絵をはさんでいるガラスに映った君を美しいと思った。

それきり君は黙った。
僕は考えることをやめ君を見つめた。
しばらく君は沈黙していた。
この「間」が、僕の言葉を待っている沈黙だと気付いたのは、さらにしばらくしてからだった。

あなたはこの美術館の絵になんの関心もないのねと彼女は言った。
よく意味がわからなかった。
あなたが興味あるのは私じゃなくて、あなたが作り上げた私のイメージだけなのねと彼女は言った。
よく意味がわからなかった。
そんなあなたにいつの間にか興味はなくなったわと彼女は言った。
僕はガラスに映った君を美しいと思っていた。

だから探しにきたの。
私が興味のあったあなたを。
だから見つけにきたの。
私を、私自身を見てくれるあなたを。

あぁ、この美術館には僕以外誰もいないと思った。
彼女が「僕の」「彼女」でなくなっていくのを感じていた。
彼女にとっての僕は、もうとっくにいなくなっていたのだな、と最後に思った。

この美術館で僕らは一人きりになった。

君はその額縁の絵を、この絵だけは変わらず美しいと言った。
僕は絵をはさんでいるガラスに映った君こそ変わらず美しいと思った。

君はかつてその額縁の絵を美しいと言った。
僕は絵をはさんでいるガラスに映った君をそのときも…。



君はかつてその美しい絵の画家と題名を僕に教えてくれた。
そのとき僕は…。

君はその額縁の絵を美しいと言った。
僕は絵をはさんでいるガラスに映った君に、

「どうして美しいと思ったの?」

そう聞いた。

かつてそう聞いたように、イマもう一度尋ねた。

彼女はイマこう言った。

「あなたと一緒に初めて見た絵だからよ」

君はその額縁の絵を美しいと言った。
僕はそのとき、ガラスに映った君ではなく、その絵を見つめた気がした。

初めて見たときの感想が、美術館のホールに木霊していった。

ブログ詩46

「夢がサメテ」

ガラス窓を
破壊して飛び出す
あなたの体
弧を描いて落ちていく

いつもなら
そこで目が覚めるのに
あなたは冷たく言い放つ

のべて
手をさしのべてくれ
必要としてくれ

あーぁ
それ以上は言わないで
のばしてもイマの私には
あなたの手を
掴むことは
できない

許して
愛させたこと
愛されたこと

今日も
さよならは
言えずに

目が覚める

和歌一首3

蔦と藤

死なめ死なめの

我にこそ

げに愛さるる

質ぞあれかし

ブログ詩45

「空から聞こえた未来完了」


死ぬほど求めたあの人の
香水の
匂いが
空を覆っている

どんより
立ち込めた
唸り声が

その雲から
舞い出した

崩れおちていく
ビルのように
崩れ落ちていく
涙に埋もれた

ひっかき傷の音
あのとき耳をふさいだ

いつしか思い出も消えるだろうと
今も
耳をふさいでいる

髪を
短くそろえたあの頃の
寒さの
温度を
体が覚えている

小さく
吐き出した
やわらい息が

目の前を
染めていった

風をくゆらせていく
煙草のように
風をくゆらせていく
重なった声

あのとき耳をふさいだ
今も
耳をふさいでいる

関係が壊れる
思い出を凍らせる
涙だけ揺れて
晴れ間の消えた空

見上げて
空を
見上げて

見ようとした
見ようとした
終わらない僕らの未来を

見えたのは

終わっていく僕らの未来だけ

ブログ詩44

「キミスキ」

いくつもの君の顔が
車窓を過ぎていく景色のように蘇る

いくつ
君の笑顔を知っただろう?

いくつ
僕は笑顔を増やしただろう

二人で眺めた海
無邪気になにも考えないでいられた

世界は鮮やかに
幸せを浮かび上がらせていた

好きでいることしかできなかった頃

ガラスの破片を光にかざして遊んだ

ゆっくりと触れあった手はお互いに暖かかった

ゆっくりと見つめあった瞳は澄んでいた

言葉をこえて

君の鼓動を感じていた

雪が降りだす前に
もう一度君の手を握りたい

切なさと涙に沈んでいく日は
当たり前にそばにいよう

大きな笑い声をあげた日は
僕もその笑顔につられよう

イライラして落ち着かない日は
左の頬をさしだそう

難しいことを考えたくない日は
疲れて眠ってしまうまで一緒に遊ぼう



本当は狂おしいほど君が好き

でもそれよりも
ただ一緒に
幸せになりたいんだ

そう思うんだ

ブログ詩43

「想いの叫び」

君がそこにいるのはわかってるのに
なんとなく手が届かない気がする午後の雨

せめて優しい言葉でもかけりゃいいのか

口を開けば叫びしか出せない乾いた心

濡らして
濡らして

いてもたってもいられなくって走り出した

踏切の音

コインが落ちて

水溜まり弾けて

電車が二人の視線を切り裂いた

君がそこにいるのはわかってるのに
なんとなく手が届かない気がする午後の雨

せめて優しい言葉でもかけりゃいいのか

口を開けば叫びしか出せない乾いた心

濡らして
濡らして

いてもたってもいられなくって走り出した

僕の気持ちよ

この遮断機をこえて

電車を貫いて

空を晴らして

ただ君のもとへ届いてくれ

ブログ詩42

「アカツキ」

東はどっち?
夢はこっち

適当な方向を
自信持って指差した

方向音痴
一人ぼっち

迷ってるけどそれが何?
歩ける足があるなら
どんなに遠回りしたっていい

顔上げたら赤い光
それは暁
私が殴りに行きたい
たどり着けないと決めつけられた場所

南はそっち?
天にタッチ

指差した方向を
自信持って走りだした

目指す新天地
歩くハイピッチ

息は切れてるけどそれが何?
進んでく意志があるから
どんなに止まってもまた踏み出せる

窓開けたら高い光
それは晴天
私が飛んで行きたい
たどり着けないと決めつけられた場所

指差せばいつもそこは
眩しいよ
手をひらいて太陽にかざした
握りこんで光つかんだ

その拳
胸にしまいこんで
駆け出した

顔上げたら赤い光
それは暁
私が殴りに行きたい
たどり着けないと決めつけられた場所

ブログ詩41

「ツミとザイアクカン」

目の前に花咲いていた
邪魔だから花裂いて行った

断末魔は聞こえたか

千切りとったその花を
すぐ横に打ち捨てた
捨てれば花など元々無かったと
あなただけはそう思えるか

その花は二度と戻らないと
その花は誰かが育てていたのだと
その花にはつぼみもあったのだと

あなたは知っていた
でも邪魔だから裂いて行った

奪うことの容易さを考える必要もなく知り
与えることの困難を考えないようにしているのか

あなたは咲いていた花裂いて行った

目の前の花消えていた
次第に心冷えていった

断末魔を思い出した

千切りとったその花を
すぐ横に打ち捨てた
元々何も無かったように見えると
あなただけが覚えていた

その花は二度と戻らないと
その花は誰かが育てていたのだと
その花にはつぼみはあったのだと

あなたは知っていた
でも考えたくないから忘れていた

その花を千切れたのはあなただけ
千切ってしまった花を
生きているうちに植えかえることができたのもあなだだけ
今も別のところで咲いているかもしれないと思いたいのもあなただけ

忘れたふりをしていた

でもあなたは
咲いていた花裂いて行った

あなたが殺したんだ

あなたが

もし今
あなたが千切った花がまた別のところで新しく咲き誇って
また裂かれて行かれそうになっているとしたら

あなたはどうする?

助けたい?

あなたがその花を助けてあげられるかはわからないけど

何もしなかったら
またあなたは殺したことになるんだろうね



あくまで例えばの話
だってあなたが裂いた花はもう元には戻らないから

考えたくないなら考えなければいい

ただ私は覚えている

目の前に花咲いていた
邪魔だから花裂いて行った

断末魔を覚えている

掌編1

「秋の夜。」

 まどろみ――。
ケータイを開くと、すでに03:30は過ぎていた。
 いや確かに昨日は昼の猛暑の疲れと突然襲ってきた妙な淋しさのために床に入ったのは早かったのだが、それでもこんな時間に起きてしまったのは誤算以外の何者でもない。
 明日。というか今日も家を出るのは07:00。二度寝して06:00に起きられる自信はどこにもなかった。

 9月に入ったというのに部屋の中はまるでジャングルのように蒸している。座っていても額から汗が流れ、既にTシャツは半分以上色が変わってしまってさぁ大変。着替えなければ。
 とりあえず強烈な喉の乾きを感じた私は、布団から出て台所に向かった。

 唸るような低く鈍い音がだんだんと近くなる。
 冷蔵室と冷凍室が一緒になっているうちの古い冷蔵庫を開けると、無機的な冷気が無感動にその場の温度を若干下げていった。

 ふと。麦茶がない。
 いつもはおーいお茶の2リットルペットボトルに作り置きしてある僕の麦茶が、今日の冷蔵庫にはなかった。見れば、やかんがコンロの上にポツンとしている。昨日、お湯に麦茶パックを入れて放置したままだったことを思い出した。
 後悔と絶望のダブルパンチ。
 溜め息を冷気に吹きかけながら、私は力なく扉を閉めた。低いうなり声がうるさい。

 容赦のない強烈な喉の乾きにうなされながら私は、シンクの横に寄りかかった。
 炭酸飲料が喉を駆け巡るあの濁流を想像する。

 ぎゅるぎゅる。

 ノーリーズン、生唾が胃の中へ吸い込まれ、私の次の行動はそこで決定された。

 そうだ、外に出よう。

 既に財布が握られた右手を制止し、私は部屋着を脱ぎ捨てた。

 そうだ、コーラを買ってくるんだ。

 ジャージのポケットに財布を放り込んで、台所の明かりを消した。むわりとした空気の海をかきわけて私は無駄な行動を一切せず部屋の扉へと進んでいった。
 履き荒らされたサンダルへ適当に足を突っ込み、ドアの取っ手を握る。

 ひやり。

 握った取っ手はこの部屋にあるどれよりも心地よかった。

 かちゃり。

 取っ手の冷たさを噛み締めながらゆっくりと扉を開けると、夜風が恐ろしいほどのなめらかさで部屋の中に滑りこんでいった。僕の髪を揺らしながら吹き抜けたとき、それはまるで冷涼という秋の手に優しく叩かれたかのようだった。
 風に導かれながら外に出ると、そこには真剣に秋の夜。それも遠い街のイルミネーションを妙に淋しい色にしたてあげている始末だ。
 いつも夏の夜が用意していた活気はなく、心さえさましてくれそうな色合いの淡い曇り空を湛えているだけだった。

僕は扉を優しく閉めた。

ブログ詩40

「鉢合わせ」

死と死と生と生とが

鉢合わせ

誰かのために鉢合わせ

一人でなくなっていくことなんて許されず

生きてくために鉢合わせ

さよなら

言わせて

さよなら

聞かせて

死と死と生と生とが

鉢合わせ

生きてくために鉢合わせ

死んでしまったら

鉢合わせ

生きてくために鉢合わせ